保育士の有給消化率と休暇制度 — 求人票にない働きやすさの見極め方
- 保育士の有給消化率は施設形態で差があり、僕の相談経験では小規模認可外は3〜4割、公立は7〜8割程度が目安です。
- 厚生労働省の就労条件総合調査では医療,福祉分野の有給取得率は6割台前半で推移しており、これが業界全体の目安値になります。
- 有給消化率を尋ねる際は代替要員の有無を聞くのが有効で、僕の相談経験では代替要員がいない園の消化率は3割前後にとどまります。
「有給、消化率で言うと全体の3割くらいですかね」——面接で聞いた園長先生の答えに、僕は思わず聞き返してしまいました。
保育士の有給消化率は、求人票に書かれた「年間休日◯◯日」という数字からは読み取れません。厚生労働省の就労条件総合調査(医療,福祉分野)によると、有給休暇の取得率は6割台前半で推移していますが、これはあくまで業界平均の目安値です。実際に僕が転職相談で聞く現場の体感値には、3割台の園から8割を超える園まで大きな開きがあります。今日は、この差を園見学や面接でどう見抜くか、実際にあった相談ケースを交えてお伝えします。
0. 求人票の「年間休日」と有給消化率は別モノ
数年前、僕が担当したAさん(30代・保育士歴8年)は、「年間休日122日」と書かれた求人票を見て転職を決めました。休日数だけを見れば申し分のない園です。ところが入職後、実際に取得できた有給は年間10日のうち6日にとどまりました。理由はシンプルで、パートを含めた人員配置が配置基準ぎりぎりで、誰かが休むと他の職員にしわ寄せが行く構造になっていたからです。
年間休日数は「所定休日が何日あるか」を示す数字で、有給休暇の取りやすさとは別の制度です。この二つを混同したまま求人票を読むと、Aさんのように「休日は多いはずなのに休めない」というギャップに直面することになります。求人票の休日欄と有給取得実績欄、どちらも記載がある求人はまだ多くありませんが、記載がない場合こそ面接で確認する価値があると僕は考えています。実際、求人票の作成担当者に聞いてみると、年間休日数は行政への届出資料からそのまま転記しているだけで、有給の運用実態までは反映していないという回答が返ってくることも珍しくありません。
1. 有給が取りにくい園に共通する3つの特徴
これまでの相談経験から、有給が取りにくいと感じる園にはいくつか共通点があると僕は考えています。
- 人員配置が配置基準+1名程度しかなく、誰か一人が休むと現場が回らない
- 運動会や発表会などの行事シーズンに休暇希望が集中し、調整が硬直化している
- フリー保育士やパート職員など、急な欠員時に代われる人がいない
逆に言えば、この3つが解消されている園は有給を取りやすい傾向にあります。処遇改善加算による人件費の底上げで、フリー保育士を1名多く配置できるようになった園が増えてきた、という声も僕の周りでは聞くようになりました。まだ体感値の域を出ませんが、配置に余裕が生まれれば休暇取得にも波及していくはずだと感じています。逆に、加算を受け取っていても人員配置を増やさず給与のみに充てている園では、休みやすさの改善は感じにくいというのが正直なところです。実際にBさん(20代・保育士歴3年)が以前勤めていた園では、処遇改善加算で基本給は上がったものの、配置人数は変わらず、有給消化率はむしろ前年より下がったという話を聞いたこともあります。
2. 施設形態別・有給消化率の体感目安
公的な統計はあくまで業界全体の数値なので、施設形態ごとの違いまでは分かりません。以下は、僕が転職相談を受ける中で聞いてきた話をもとにした体感目安です。あくまで目安値として参考にしてください。
| 施設形態 | 有給消化率の体感目安 | 背景 |
|---|---|---|
| 公立保育所 | 7〜8割程度 | 会計年度任用職員を含めた人員配置に余裕があり、代替要員を確保する仕組みが整っている |
| 大規模法人の認可保育所 | 5〜6割程度 | フリー保育士の配置はあるが、行事シーズンに希望が偏りやすい |
| 小規模認可保育所・企業主導型 | 3〜4割程度 | 人員配置がぎりぎりで、代替要員が利きにくい |
数字だけを見て「公立の方が絶対に良い」と決めつけるのは早計です。公立でも人手不足の園はありますし、小規模でも園長の采配で休みやすさを確保している園もあります。最終的には施設形態の傾向を頭に入れつつ、個別の確認が欠かせないというのが僕の結論です。
3. 面接・園見学で有給消化率を確認する具体的な聞き方
「有給は取れますか」とストレートに聞くと、園側は「もちろん取れますよ」と答えざるを得ない質問になってしまいます。僕がおすすめしているのは、数字や体制で返答が返ってくる聞き方です。
たとえば「昨年度、正職員の方の有給取得日数は平均でどれくらいでしたか」と尋ねれば、具体的な日数で答えが返ってくるかどうかで、園がこの数字を把握しているか、そして実態がどうかが見えてきます。「有給を取るとき、代わりに入るのはどなたですか」という質問も有効です。フリー保育士が明確に名指しできる園は、代替の仕組みが機能している可能性が高いと僕は考えています。逆に「みんなで協力して」という抽象的な答えが返ってきた場合は、実際には調整が難しい場合があると見ておいた方がよいでしょう。
今日から使える確認フレーズ
面接の逆質問の時間は限られているので、僕は次の2つに絞って聞くことをおすすめしています。ひとつは「昨年度の有給取得日数の平均を教えていただけますか」、もうひとつは「行事シーズンに休みを希望した場合、どのように調整されていますか」です。この2問だけでも、園の人員配置の余裕度合いはかなり見えてきます。所要時間にすると3分程度の質問ですが、返ってくる答えの具体性で、その園の余力がかなり見えてくると僕は感じています。
4. 有給以外に見ておきたい休暇制度と処遇改善の関係
有給消化率と合わせて確認したいのが、産休・育休からの復帰実績です。「制度はあるが、実際に復帰した職員がいるか」を尋ねると、制度の実効性が分かります。慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、法定外の休暇制度を独自に設けている園もあり、これは処遇改善加算の使い道の一つとして、給与だけでなく働きやすさにも投資している園のサインになり得ると僕は見ています。
こども家庭庁が進める処遇改善の流れは、給与水準だけでなく人員配置の余裕という形で、休暇の取りやすさにも波及し始めていると僕は感じています。まだ全ての園に行き渡っているわけではありませんが、求人票の処遇改善加算の記載と合わせて、休暇制度の運用実態まで確認する価値は十分にあると考えています。
5. よくある失敗と対処
相談を受けていて一番多い失敗は、「園見学のときに雰囲気が良かったから」という理由だけで有給の確認を省略してしまうケースです。Cさん(20代・保育士歴4年)は、見学時の職員同士の会話が明るく、休憩室の雰囲気も良かったことから安心して転職を決めました。ところが入職後、実際は行事準備が続く時期に有給希望を出すと「みんな我慢しているから」と暗に断られる空気があり、結局年間で使えた有給は2日だけだったそうです。雰囲気の良さと休みやすさは、残念ながら必ずしも一致しません。
この失敗への対処としては、面接時に前述の2つの確認フレーズを使うことに加えて、可能であれば内定後の条件確認の場で「有給取得の実績」を書面や口頭で改めて聞いておくことをおすすめします。口約束で終わらせず、労働条件通知書に休暇制度の記載があるかも合わせて確認すると、入職後のギャップをさらに減らせます。もう一つよくある失敗は、有給消化率だけを見て代替要員の有無を聞き忘れることです。消化率が高い園でも、それが特定の一部職員に偏っている場合があるため、「誰が取れているか」まで踏み込んで聞くことを僕はおすすめしています。
6. ケース比較 — 認可保育所と企業主導型、二人のその後
先ほど触れたBさんと、別の相談者Dさん(30代・保育士歴6年)のその後を比較すると、休暇制度の違いが働き方にどう影響するかが分かりやすいと思います。Bさんは企業主導型保育施設からフリー保育士2名を配置する大規模法人の認可保育所に転職し、有給消化率は3割台から6割程度まで改善しました。行事シーズンの希望も、事前に希望調整シートが配られる仕組みがあり、休みたい時期を早めに申告できるようになったことが大きかったそうです。
一方のDさんは、給与面の条件を優先して別の企業主導型保育施設に転職しましたが、人員配置は前職とほぼ変わらず、有給消化率も3割台のまま変化がありませんでした。Dさん自身、「給与は上がったけれど、休みにくさは変わらなかった」と振り返っています。この2つのケースから僕が感じるのは、給与水準の比較だけで転職先を決めると、休みやすさの面では期待外れになる場合があるということです。処遇改善加算の恩恵が人員配置にまで及んでいるかどうかを、面接で具体的に確認する重要性を、この比較は教えてくれていると思います。
7.(結論)休みやすさは「制度」ではなく「配置」で決まる
Aさんはその後、人員配置に余裕のある別の園に転職し、有給消化率は8割を超えるようになりました。この経験から僕が学んだのは、休みやすさを決めるのは制度の有無ではなく、日々の人員配置の余裕だということです。求人票の年間休日数や「有給取得可能」という一文だけを見て安心せず、面接や園見学で具体的な数字と代替の仕組みを確認する。それが、入職後のギャップを減らす一番の近道だと僕は考えています。
皆さんいかがでしたでしょうか。求人票に書かれていない「休みやすさ」まで見極めて、納得のいく転職先を選んでいただければと思います。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. 保育士の有給消化率はどれくらいが平均ですか?
厚生労働省の就労条件総合調査(医療,福祉分野)では有給取得率は6割台前半が目安ですが、これは業界平均であり施設形態によって差があります。僕の転職相談の体感値では、小規模認可外や企業主導型で3〜4割、大規模法人や公立で7〜8割程度という開きがあり、求人票の年間休日数だけでは判断できません。面接や園見学で具体的な取得実績を確認することをおすすめします。
Q. 求人票の年間休日数が多ければ有給も取りやすいですか?
年間休日数と有給消化率は必ずしも比例しません。年間休日122日と記載されていても、代替要員がいない園では有給を使いにくいケースがあります。休日数は所定休日の話で、有給休暇は別枠の制度です。判断材料にするなら、休日数だけでなく代替保育士の配置状況や、昨年度の平均取得日数を面接で確認する方が実態に近づけると僕は考えています。
Q. 有給消化率は面接でどう聞けば失礼になりませんか?
「有給は取れますか」と直接聞くより、「昨年度、正職員の方の有給取得日数は平均でどれくらいでしたか」「有給を取る際、代わりに入る方はどなたですか」と具体的に尋ねる方が、角が立たずに実態を引き出しやすいと僕は感じています。数字や体制で答えが返ってくるかどうかが、その園の人員配置の余裕を測る目安になります。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。